「会社の数字を見るだけでなく、未来を予測し戦略を描く経営の意思決定を数字で支える戦略パートナー」—それがFP&Aです。経理や財務とは何が違うのか、どんな仕事をしているのか、そしてどうすればFP&Aになれるのか。実際の仕事内容からキャリアの築き方まで詳しく解説します。
FP&Aとは何か
FP&A(Financial Planning & Analysis)とは、企業の財務計画立案と分析を専門とする職種です。
日本語では「財務企画分析」と訳されることが多く、一言で表現すると「企業の財務戦略立案・分析のプロフェッショナル」です。
経理・会計との違い
項目 | 経理会計 | FP&A |
時間軸 | 過去の数字を整理・記録 | 未来志向で戦略立案 |
目的 | 正確な財務報告 | 経営判断の支援 |
関わる相手 | 社内・監査法人 | 経営陣・投資家 |
思考スタイル | ルールベース | 戦略・分析ベース |
なぜ今FP&Aが求められるのか
FP&A需要急増の背景には、2015年6月のコーポレートガバナンス・コード適用があります。
上場企業に透明性の高い経営と投資家への説明責任が求められるようになり、従来の「なんとなく」経営では対応困難となったため、データに基づく戦略的経営判断を支援するFP&A人材への需要が急激に高まりました。
さらに以下の環境変化も影響しています。
- ビジネス環境の不確実性増大:市場変化のスピード加速
- 経営のスピード化:迅速な意思決定が生存に直結
- データドリブン経営の浸透:感覚ではなく数字に基づく判断
- 投資家からの要求:透明性の高い財務戦略・予測精度向上
FP&Aがいない会社で起こりがちな問題
- 「なんとなく」の予算策定で計画と実績が大きくズレる
- 業績悪化の原因が分からず、対策が後手に回る
- 経営陣が「現場の感覚」だけで重要な投資判断をしてしまう
- 四半期ごとに「数字が合わない!」と経理部門がてんやわんや
- 競合他社との差がどこにあるのか把握できない
FP&Aの具体的な仕事内容
FP&Aは予算策定から業績分析、経営レポート作成、投資判断支援まで、企業の財務面における重要な意思決定のほぼ全てに関わる、経営の中枢を支える多岐にわたる業務を担当します。
主な業務内容
業務分野 | 具体的な内容 | 頻度・時期 |
予算策定 | 来年度の売上・費用計画作成、月次予算管理 | 年1回、月次 |
業績分析 | 実績と計画の差異分析、原因究明と改善提案 | 月次・四半期 |
経営レポート作成 | 役員向け月次・四半期レポート、KPI管理 | 月次・四半期 |
投資判断支援 | 新規事業・設備投資の収益性分析、ROI算出 | 案件ベース |
経営戦略サポート | M&A分析、市場参入検討、事業ポートフォリオ最適化 | 戦略検討時 |
FP&Aの魅力・やりがい
経営陣と直接議論しながら会社の方向性を決められる影響力と、数字を通して事業全体を俯瞰できる視座の高さが、FP&A最大の魅力です。
具体的な魅力
- 経営陣との距離の近さ:CEO・CFOと直接関わり、会社の意思決定に直接関われる
- 全社視点の獲得:数字を通して会社全体を俯瞰できる
- スキルの汎用性:論理的思考力とビジネス感覚の両方が身につき、業界を問わず活躍可能
- キャリアの発展性:将来的にCFOへの道も開ける
- 社内投資家的役割:事業の収益性を客観的に評価し、改善提案できる
FP&Aになる方法・キャリアパス
主な転職ルート
出身職種 | 転職の優位性 | 必要な追加スキル |
経理・会計 | 財務知識の基礎がある | 分析力・戦略思考 |
コンサル | 分析力・論理的思考力 | 財務・会計知識 |
投資銀行 | ファイナンス知識 | 事業理解・社内調整力 |
事業企画 | ビジネス理解・企画力 | 財務分析スキル |
必要なスキル・資格
必須スキル
- Excel(上級レベル)、PowerBI等のBIツール
- 財務・会計の基礎知識(簿記2級以上推奨)
- 論理的思考力・分析力
- コミュニケーション能力・プレゼンテーション力
あると有利な資格
- 公認会計士、税理士、USCPA
- 中小企業診断士、MBA
- 英語力(TOEIC 700点以上)
求められる素養
- 数字への感度:データから本質を読み取る力
- 戦略的思考:長期的視点での判断力
- 客観性:感情に左右されない冷静な分析力
- コミュニケーション力:複雑な数字を分かりやすく説明する力
FP&A転職市場の現状
企業のデジタル化・グローバル化に伴いFP&A人材の需要は急拡大しており、年収600万円~1500万円と高待遇で、将来的にはCFOへの道も開けるキャリアとして注目されています。
年収レンジ(経験年数別)
- 未経験・転職1年目:500-700万円
- 経験3-5年:700-1000万円
- マネージャークラス:1000-1500万円
- シニアマネージャー以上:1500万円以上
需要の高い業界・企業
- 外資系企業:FP&A文化が根付いている
- 上場企業:コーポレートガバナンス対応で需要増
- 成長企業・スタートアップ:急成長に伴う管理体制強化
- メーカー・商社:事業ポートフォリオ最適化ニーズ
まとめ
FP&Aは企業の未来を数字で描く、やりがいと成長性を兼ね備えた職種です。従来の経理・財務とは異なり、経営の意思決定に直結する戦略的な役割を担います。
コーポレートガバナンス・コード導入以降、日本企業でもFP&A人材への需要が急速に高まっており、今後さらに重要性が増すことは間違いありません。
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