監査法人で3年以上の経験を積んだ多くの公認会計士の方が、日々の監査業務に慣れ、専門性は身についたものの、このままで良いのかとキャリアについて考えられています。
従来の公認会計士転職といえば、監査法人間の移動や大手事業会社の経理部門、コンサルティングファームが主な選択肢でした。そんな中、徐々に増えてきているのがスタートアップ企業への転職です。急成長するスタートアップエコシステムにおいて、公認会計士への需要は着実に拡大しており、従来の「安定志向」から「成長志向」へと価値観をシフトする会計士が増えています。
- 公認会計士転職の主要選択肢を比較
- 1.監査法人への転職
- 2.事業会社(経理・財務部門)への転職
- 3.コンサルティングファームへの転職
- 4.スタートアップへの転職
- なぜスタートアップが公認会計士を求めるのか
- 1.財務基盤強化の必要性
- 2.経営の透明性・ガバナンス強化
- スタートアップでの具体的業務内容
- 1.成長ステージ別の役割
- スタートアップ転職の魅力
- 1.専門性を活かした経営参画
- 2.多様な経験とスキル習得機会
- 3.成長の実感と経済的リターン
- スタートアップで活躍するために必要なスキル
- 1.活かせる専門スキル
- 2.身につけるべき追加スキル
- 必要なビジネススキル
- 1.コミュニケーション能力
- 2.問題解決・改善提案力
- 3.転職時の注意点
- 4.キャリア面のリスク
- 転職成功のポイント
- 1.明確な転職理由・目標設定
- 2.企業・業界研究の徹底
- 3.自身のスキル・経験の棚卸し・アピール
- スタートアップ転職の将来性
- まとめ
公認会計士転職の主要選択肢を比較
1.監査法人への転職
年収レンジは600万円~1200万円程度で、専門性をさらに磨くことができます。Big4から中小監査法人への転職では労働環境の改善を、逆方向では待遇向上やより大きなクライアントを担当する機会を求めるケースが多く見られます。
2.事業会社(経理・財務部門)への転職
年収レンジは500万円~1000万円程度で、ワークライフバランスの改善を重視する公認会計士に人気です。製造業では原価計算、金融業では複雑な金融商品の会計処理、IT業界では急速な事業成長に対応した管理体制構築など、それぞれ特色があります。
3.コンサルティングファームへの転職
年収レンジは700万円~1500万円程度と高水準で、多岐にわたるビジネススキルを習得できます。会計・税務、経営戦略、M&Aや企業再生など、ファームの種類によって業務内容は大きく異なります。
4.スタートアップへの転職
「経営参画」、「事業成長の実感」、「自身の成長」を求める公認会計士にとって、スタートアップは魅力的な選択肢となっています。20代後半や30代前半でCFOクラスのポジションに就くことも珍しくありません。
なぜスタートアップが公認会計士を求めるのか
1.財務基盤強化の必要性
事業成長のための資金調達に向けたベンチャーキャピタルや金融機関との信頼構築、適切な財務報告体制の構築において、公認会計士の存在は企業価値向上に直結します。
IPOを視野に入れたスタートアップでは、内部統制制度の構築や開示体制の整備が必須となり、監査法人での経験を持つ公認会計士への需要は特に高くなっています。
2.経営の透明性・ガバナンス強化
急速に成長するスタートアップにおいて、組織の拡大に伴うリスク管理体制の整備は重要な課題です。公認会計士は、リスク識別・評価のプロフェッショナルとして、企業のガバナンス体制強化に貢献できます。
スタートアップでの具体的業務内容
1.成長ステージ別の役割
アーリーステージ
・基本的な経理業務の仕組み化
・適切な会計処理、請求・支払い管理
・資金調達時の投資家向け財務資料作成
ミドルステージ
・管理会計制度の導入
・事業部門別の収益管理、プロジェクト別の採算分析
・予算策定と実績管理
・経理・財務部門の体制整備や人材育成
レイターステージ・IPO準備期
・監査法人対応
・有価証券報告書等の開示書類作成
・株式公開準備業務全般
・CFOポジションでの経営戦略立案・実行
スタートアップ転職の魅力
1.専門性を活かした経営参画
スタートアップ転職の最大の魅力は、公認会計士としての専門性を活かしながら、企業の経営に直接参画でき、経営陣の近くで財務戦略の立案・実行に関与できます。資金調達戦略、投資判断、事業計画の策定など、重要な意思決定に参画できる機会は、他の転職先では得られない貴重な経験となります。
2.多様な経験とスキル習得機会
スタートアップでは、経理・財務業務に留まらず、人事、法務、総務など幅広い業務領域に関わるため、従来の会計業務の枠を超えた新しい知識や経験を積むことができます。
3.成長の実感と経済的リターン
多くのスタートアップではストックオプション制度が導入されており、企業の成長とともに大きな経済的リターンを得られる可能性があります。
スタートアップで活躍するために必要なスキル
1.活かせる専門スキル
・監査経験
・内部統制の評価・改善提案力
・リスク識別・評価能力
・財務諸表分析や経営指標の設計・評価スキル
2.身につけるべき追加スキル
・管理会計・予算管理スキル(ExcelやBIツールの活用)
・資金調達・投資評価の知識(VC調達プロセス、企業価値評価)
・税務実務(法人税、国際税務)
必要なビジネススキル
1.コミュニケーション能力
・会計・財務の専門用語を使わずに、非会計職のメンバーにもわかりやすく情報を伝える能力
・経営陣や投資家への説明・提案スキル
2.問題解決・改善提案力
・業務効率化やシステム化の企画提案
・コスト最適化や収益改善のアイデア創出
・プロセス改善やマニュアル化の推進
3.転職時の注意点
・待遇・環境面のリスク
・給与水準の変化
・福利厚生(退職金制度、住宅補助、各種手当)が整備されていない場合
・少数精鋭組織での業務量増加
4.キャリア面のリスク
・監査業務から離れることによる専門性維持の困難
・将来的な大手企業復帰時の転職市場での評価
転職成功のポイント
1.明確な転職理由・目標設定
成功した転職者は皆、「なぜ転職するのか」「転職先で何を実現したいか」を明確に持っています。単に現状への不満だけでなく、将来への前向きなビジョンを持つことが重要です。
2.企業・業界研究の徹底
転職先の業界特性、ビジネスモデル、成長性について深く理解し、自分のスキルがどのように活かせるかを具体的に描けていることが成功の鍵となります。
3.自身のスキル・経験の棚卸し・アピール
監査経験をスタートアップでの業務にどう活かせるかを具体的に説明できることが重要です。内部統制、リスク管理、財務分析など、監査で培ったスキルの価値を適切にアピールできる準備が必要です。
スタートアップ転職の将来性
政府の「スタートアップ育成5か年計画」により、スタートアップ投資額は2027年度に10兆円規模を目指すとされており、スタートアップ市場は今後も拡大すると予想されています。それに伴い公認会計士への需要も継続的に高まると考えられます。
IPOを目指すスタートアップの増加、他にも海外展開を進める企業の増加、M&Aの活性化など、スタートアップ市場の拡大と共に公認会計士の専門性が求められる場面は今後ますます多様化し増えていくでしょう。
まとめ
公認会計士のスタートアップ転職は、確かにリスクを伴いますが、それを上回る魅力と将来性があります。従来の転職先では得られない経営参画の機会、多様なスキル習得の場、そして大きな経済的リターンの可能性がありますので、リスクを考慮してもキャリアの選択肢として十分に検討する価値があります。
重要なのは、リスクを適切に評価し、自分なりの許容範囲を設定することとご自身の明確な基準と目標を持って転職活動に臨むことです。ご家族がいる場合には、事前に十分な理解を得ておくことも大切です。そうすることで、公認会計士という大きなアドバンテージを武器により充実した職業人生を歩むことができるでしょう。
スタートアップ転職に興味を持った方は、まず業界動向や企業情報の継続的な収集から始めることをお勧めします。自己分析とキャリアビジョンの言語化も重要なステップとなりますので、具体的な転職活動を開始する際は、AGSの転職サイトにご登録の上、担当のコンサルタントにご相談ください。あなたのスタートアップ転職を全力でサポートいたします。