経理担当として経験を積み、今後のキャリアについて考える機会が増えている方にとって「マネージャーになるには何が必要なのか」「自分に足りないスキルは何か」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、経理マネージャーになるために必要なスキルと心構えを体系的に整理し、具体的なロードマップをお示しします。
経理マネージャーに求められる3つのコア能力
1. 専門スキルの深化
経理マネージャーには、担当者レベルを超えた高度な専門知識が求められます。企業規模により重点は異なりますが、以下の3つの領域でスキルを磨くことが重要です。
高度な会計知識
連結決算、税務処理、会計基準への対応など、複雑な会計処理を理解し実行できる能力が必要です。
大手企業ではIFRS対応やセグメント会計などより高度な知識が、中小企業では幅広い実務知識と税務申告対応が重視されます。ベンチャー企業では IPO準備に向けた開示資料作成スキルが特に重要になります。
システムスキルとデジタル対応
DXが進む現代では、ERPシステムの導入・運用スキルや業務フローの最適化能力が不可欠です。
大手企業ではSAP等の大規模ERPやBIツールの活用、中小企業ではExcel高度活用と中小規模システムの効率的運用が求められます。ベンチャー企業では迅速なシステム導入と柔軟な対応力が重要です。
内部統制・リスク管理
コンプライアンス強化の流れを受けて、内部統制の構築・運用やリスク管理は経理マネージャーの重要な役割です。
大手企業ではJ-SOX対応や内部監査体制の整備が、中小企業では基本的な内部統制の構築と外部専門家との連携が、ベンチャー企業では成長に合わせた統制環境の段階的構築がそれぞれ重要になります。
2. マネジメントスキル
チームビルディング
多様なメンバーをまとめ、チーム全体のパフォーマンスを最大化する能力が必要です。個々の強みを活かしながら協力し合える環境づくりが重要になります。
部下の育成・指導
後輩の成長を支援し、組織全体のレベル向上を図る指導力が求められます。相手の将来のキャリアを見据えた育成計画を立てられることが大切です。
業務効率化とプロセス改善
限られたリソースで成果を上げるため、継続的な業務改善提案を行う能力が必要です。現状に満足せず、常により良い方法を模索する姿勢が重要です。
3. 経営視点での思考力
戦略的思考力
経理マネージャーは、経営陣と現場をつなぐ重要な橋渡し役を担います。数字の背景にある課題や機会を経営層に分かりやすく伝える能力や、データから経営判断につながる洞察を導き出す戦略的思考力が求められます。
マネージャーを目指す上で重要な取り組み
経理マネージャーへのキャリアアップは、段階的にスキルと経験を積み重ねることが重要です。優先度別に重要な取り組みを整理しました。
基盤となるスキル強化(優先度:高)
マネージャーとしての信頼性を築くために、まず確実に身につけておきたいスキルです。
重点項目 | 具体的な取り組み |
専門資格の取得 | 簿記1級、税理士科目合格、USCPA |
実務スキルの向上 | 月次・年次決算の全体把握、Excel上級スキル |
システム理解 | 使用中のERPシステムの深い理解、業務フロー把握 |
実践経験の積み重ね(優先度:高)
実際のマネジメント経験につながる具体的な行動を起こす段階です。
重点項目 | 具体的な取り組み |
プロジェクト参加 | システム導入・業務改善プロジェクトへの積極的参加 |
指導経験 | 新人OJT担当、社内勉強会の企画・運営 |
対外調整業務 | 監査法人・税理士・金融機関との窓口業務 |
応用スキルの習得(優先度:中)
マネージャーとしてさらに差をつけるための発展的な取り組みです。
重点項目 | 具体的な取り組み |
戦略的思考 | 予算策定・業績分析への参画、経営会議での報告経験 |
チームマネジメント | 部署内での小チーム運営、メンバーのスケジュール管理 |
外部学習 | 業界セミナー参加、他社経理担当者とのネットワーク構築 |
転職を活用したキャリアアップ
社内昇格が難しい場合や、より大きな責任とポジションを求める場合は、転職も有効な選択肢です。
経理マネージャーの求人は安定的にあり、特に上場企業や成長企業では経験者への需要が高まっています。
転職を検討すべきタイミング
タイミング | 具体的な状況 |
成果を上げた時 | 現在のポジションで一定の業務改善実績を残した |
明確なビジョンを持った時 | 次のステップでやりたいことが明確になった |
昇格機会が限定的な時 | 社内での昇進可能性が構造的に難しい |
新しい調整を求める時 | 異なる業界・規模での経験を積みたい |
転職活動でのアピールポイント
転職活動では、これまでの業務改善実績やチーム運営経験を具体的な数値と共にアピールすることで、マネージャーポジションでの採用可能性を高められます。
効果的なアピール例
- 「月次決算の早期化により、経営判断に必要な情報提供を3日短縮した」
- 「システム導入プロジェクトをリードし、年間◯◯万円のコスト削減を実現した」
- 「新人5名のOJTを担当し、全員が3ヶ月で独り立ちできる育成体制を構築した」
企業規模別の転職戦略
転職先の企業規模によって、アピールすべき経験やスキルが異なります。
大手企業への転職:高度な専門知識と大規模組織での調整経験を強調
中小企業への転職:幅広い実務能力と経営に近い立場での貢献意欲をアピール
ベンチャー企業への転職:変化への対応力とスピード感のある業務遂行能力を重視
よくある落とし穴と対策
落とし穴 | 対策 |
専門性偏重 | 技術スキルと並行してコミュニケーション能力も磨く |
他部署との距離 | 積極的に他部門との関係構築を図る |
変化への消極性 | 新技術・制度への学習意欲を持ち続ける |
経理という専門性の高い職種だからこそ、技術的な知識だけに偏らず、人を動かし組織を運営するスキルもバランス良く身につけることが重要です。
まとめ
経理マネージャーへのキャリアアップは、専門性・マネジメント力・経営視点の3つの能力をバランス良く伸ばすことが鍵となります。
今すぐできる3つのアクション
- 改善提案の実践:現在の業務で1つの改善を実施し、成果を数値化して記録する
- 関係構築の強化:他部署の担当者とのコミュニケーション機会を月1回以上作る
- 継続学習の習慣化:経理・会計関連の書籍を月1冊読む習慣をつける
長期的な成長マインドセット
マネージャーへの道のりは決して平坦ではありませんが、一歩一歩着実にスキルと経験を積み重ねていけば、必ず目標に到達できます。現状に満足せず、常に学び続ける姿勢を大切にしてください。
社内での昇格と転職によるキャリアアップの両方を視野に入れることで、より多くの可能性が開けます。AGSコンサルティングでは経理マネージャーのポジションも取り扱っていますので、お気軽にご登録の上、ご相談ください。
あなたの経理マネージャーへの挑戦を応援しています。