CFOは「Chief Financial Officer」の略語で、日本語では最高財務責任者と訳され企業の財務経理の責任者を指します。近年、会計士からCFOを目指すことは、人気のキャリアパスとなってきており、これからのキャリアについて考える会計士の方にCFOについて解説いたします。
CFOが求められる背景
変化の激しい現代ではビジネスの短命化が進み、企業は様々な課題に直面する機会が増加しています。
そのようなビジネス環境において、企業の持続的成長を支えるために以下のような理由からCFOニーズが高まっています。
1.資金調達
資金調達をするためには、自社の事業戦略や競合優位性、財務戦略などに加え、透明性の高い財務情報を開示し、投資家からリターンに値する企業だと認識される必要があります。
経理や財務の専門性だけでなく、経営者の目線で全体を俯瞰できる人材が求められるようになってきています。
2.グローバル化
国際的な事業展開においては、財務戦略が企業の競争力を左右する時代になり、 IFRS(国際財務報告基準)にもとづく財務情報開示の必要性が増しています。
税制や会計基準の改定に適時対応するなど、組織をマネジメントし正しく企業経営を行う内部統制力なども重視されるようになっています。
3.IPO、M&A (合併・買収)
スタートアップやベンチャー企業などにおいては、特にCFOのニーズが高まっており、将来のIPOやM&Aに向けた準備に幅広くかつ高い専門性が求められます。
IPO準備は、3年程度の期間をかけ、資本政策や社内体制の構築、主幹事証券の選定や交渉なども行いながら、確実な準備を進めていくことが必要で、M&Aにおいても相手との交渉や社内の調整などに幅広く関与する必要がありますので、専門性の高い知識や経験のある人材が求められるようになってきています。
会計士がCFOを目指すべき理由
監査法人やコンサルティング会社などの会計士がCFOを目指すことで、これまで培った高度な会計・財務スキルといったご自身の得意領域を活かしながら、経営の中枢で活躍できる機会を得ることができます。
財務分析や会計処理能力については、CFOとして当然のように求められますし、IPO支援など監査業務で養われた内部統制に関する知識や決算早期化など課題の洗い出しから課題解決力も今後のCFOとしての活躍に大いに役立ちます。
このように会計士としての経験がCFO業務に直結してくることに加え、様々なメリットも考えられます。
1.自社の成長に当事者として関ることができる
外部から関与する会計士とCFOとの一番の大きな違いは、企業の成長を、当事者として直接支えることができる点です。
監査法人では外部の立場から企業を支援しますが、CFOの場合、企業の内部から戦略的な意思決定に関与し、資金調達や財務戦略の立案・実行を通じて企業の成長に貢献します。簡単なことではありませんが、成長をより実感でき、経営陣の一員として企業の未来を形作ることができるのは、大きなやりがいとなります。
2.幅広い業務経験を積むことができる
CFOとしての役割は多岐にわたり、監査法人では得られない多様な業務経験を積むことができます。
財務管理、予算編成、資金調達、M&Aなど、幅広い業務に加え、企業全体の戦略や方向性の意思決定にも関わります。様々なステークホルダーや多部門との交渉や連携を通じて、経営者としての視点も養うことができます。
3.市場からの高い評価とキャリアアップの機会
CFOは企業の財務戦略をリードする重要なポジションであり、その役割を果たすことで高い評価を得ることができます。企業の成長に直接貢献することで、社内だけでなく、社外からも信頼を得ることができ、市場価値を高めることができます。
また、幅広い業務やマネジメントを担うことで多様なキャリアを描くことができ自由度が広がるでしょう。
CFOの業務とは
CFOの業務には、資金調達、財務戦略の策定、業績管理、内部統制、IRの5つが挙げられます。具体的に説明いたします。
1.資金調達
CFOは、企業の運営や成長に必要な資金を調達する重要な役割を担っています。資金調達の主な手段は、金融機関からの「融資」と投資家からの「出資」の2つです。
融資では、財務諸表の整備、返済計画の策定、金融機関との交渉などを通じて、審査をクリアする必要があります。
出資では、投資家の選定、株式の種類や数の調整、契約書の作成などを行います。
CFOは、資金の必要なタイミングや金額、調達先を見極め、戦略的に資金調達を計画・実行することで、企業の安定的な運営と成長を支えます。
2.財務戦略の策定
CFOは、企業の短期・長期目標を達成するために、経営戦略に基づいた財務戦略の立案と実行を担います。主に資本政策の立案・実行、資金の運用と管理、予算の適正配分、M&Aの企画・実行、財務計画の策定とモニタリングなどを行います。
3.業績管理
CFOは、企業の利益最大化を目指し、売上とコストのバランスを保ちながら、業績とコストの両面を管理します。主に予算の立案と実行、予実分析、コスト管理、リソース活用、成長期のコスト増加への対応などを行います。
4.内部統制
内部統制とは、企業が目標達成に向けて必要なルールや仕組みを整備し、正しく運用することを指します。
CFOは、企業が正しく効率的な経営を行うために内部統制の整備と運用において中心的な役割を果たします。
主に、社内ルールと業務プロセスの整備、法令遵守とリスク管理、財務報告の信頼性向上、上場準備対応などを行います。
5.IR (投資家向け広報)
CFOは、企業の経営・財務情報を投資家に対して透明性高く開示し、信頼関係を築くためのIR活動を担います。これは企業価値の向上や株価の安定にもつながる重要な業務です。主に決算開示資料の作成、株主総会の準備・開催、投資家とのコミュニケーションなどを行います。
CFOの年収
CFOの年収は企業規模によって大きく異なり、会計士と比較しても2倍近くの年収の違いが出てくるケースも多いようです。
企業タイプ | 年収相場(目安) | 特徴・補足 |
ベンチャー企業 | 約1,000万〜2,000万円 | ストックオプション付与が多い |
中小企業 | 約1,500万〜2,500万円 | ワークライフバランス重視の傾向もあり |
上場企業(国内) | 約2,000万〜3,000万円 | 財務報告の信頼性が重視される |
大企業(国内) | 約2,500万〜5,000万円 | 大規模なM&A案件を担当することも |
外資系企業 | 約2,500万〜5,000万円以上 | 成果主義・高目標・高報酬の傾向が強い |
CFOになるために必要なスキル・経験
CFOにとって身に着けておくべきスキルや経験にはどのようなものがあるのでしょうか。
1.財務・会計の専門知識
CFOは、企業の財務戦略や資金管理を行うために経理、財務、税務といった幅広い知識が必要不可欠です。
特に、資金調達やエクイティファイナンスに関する経験はとても貴重な経験となりますので、外部からの高い評価に値します。
また、企業価値の評価方法やM&Aの知識も重要です。
これからはIPOだけでなくM&Aによる成長戦略もますます増えてくることが想定されますので、M&Aに関する知識や経験も重宝されるでしょう。
2.コミュニケーション能力
金融機関からの借り入れや投資家から資金調達を行うためには、自社の事業戦略や競争優位性などの魅力を伝え、相手に資金提供の合意をもらえるよう働きかける必要がありますので、高いコミュニケーション能力が必須です。
また、財務戦略をスムーズに実行するためには、社内に対しても理解を得るためのコミュニケーションが必要となるでしょう。
3.リーダーシップ・マネジメント力
CFOは、経営陣の一角を担う役割としてリーダーシップを発揮することが求められます。
経営企画をはじめ、経理・財務に加え、法務や人事などの管理部門全体をマネジメントし、企業全体を適切な方向へ導く必要があります。
企業選びのポイント
CFOを目指す転職の企業選びには、企業の方向性や期待される役割と今後自分が培いたいスキルや経験などのキャリアにおける目標に合致しているかがとても大切です。
例えば、成長中のスタートアップ企業であれば、資金調達や経営戦略の経験を積む機会が多く、CFOとしてのスキルを磨くのに適しておりますが、最近はスタートアップの資金調達は起業家自らが担い、管理体制の構築や資金繰り、決算早期化など外部コンサルなどを活用しながら任せるケースも増えてきております。
自分がCFOとして経験したいことができない、といったことが起らぬよう、慎重に企業を選びましょう。
まとめ
会計士からCFOへの道は、これまでの経験を活かしながらも、報酬だけでなく経営視点や新たなスキル・経験を身につけることができる非常に魅力的なキャリアパスです。
ただし、企業を選ぶときは、これからの自分のキャリアにおいて必要となるスキルや経験を今一度ご自身で棚卸し、慎重に選びましょう。1人で棚卸をすることが困難な場合は、積極的に人材紹介のキャリアアドバイザーに相談すると良いでしょう。
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