「経理の仕事は好きだけれど、もっと幅広く会社全体の管理業務を見てみたい」と感じたことはありませんか。日々の業務をこなしながらも、将来的には総務や人事、法務なども含めた管理部門全体を統括するポジションに興味を持つ経理担当者は少なくありません。
しかし、「経理以外の知識がない自分に管理部長は務まるのだろうか」「どんな経験を積めば管理部門の統括ができるようになるのだろうか」という不安を抱える方も多いでしょう。この記事では、経理職から管理部門統括へのキャリアパスと、そのために必要な具体的な経験・スキルについて詳しく解説します。
管理部長の役割と求められるスキルセット
管理部長が統括する業務範囲
管理部長は、経理・総務・人事・法務・情報システムなど、企業の基盤となる間接部門を横断的に統括する重要なポジションです。
具体的には、財務管理だけでなく、オフィス環境の整備、従業員の採用・育成、契約書のチェック、ITインフラの管理まで、企業活動を支える幅広い領域に責任を持ちます。
経理職との違い:専門性から統括力へのシフト
経理担当者が数字の正確性や業務効率化に集中するのに対し、管理部長は各部門の連携を図りながら、経営戦略の実現を支える役割を担います。
細かな業務の実行よりも、全体最適の視点で判断し、各部門のリーダーをまとめ上げることが主な仕事となります。
必要な4つのコアスキル
管理部長に求められるスキルは、財務的視点での経営判断力、多様な部門をまとめる組織運営力、中長期的な戦略的思考力、そして経営陣や各部門との円滑なコミュニケーション能力の4つが核となります。
これらのスキルは一朝一夕で身につくものではありませんが、経理職での経験を基盤として計画的に習得していくことが可能です。
経理職の強みを活かした管理部長への道筋
経理職が持つアドバンテージ
経理職には、数字に対する高い感度、リスクを見抜く分析力、そして業務の正確性を重視する姿勢という、管理部長に必要な基礎能力が既に備わっています。
特に、財務データから会社の状況を読み取る力は、管理部門統括において極めて重要な武器となります。
王道の段階的キャリアパス
最も確実で王道となるキャリアパスは、経理領域での専門性を深めながら段階的にマネジメント範囲を広げていく方法です。
Step1:経理チームリーダー段階
まずは経理チーム内でのリーダーシップを発揮し、メンバーの指導や業務改善に取り組みます。月次決算の早期化や業務プロセスの効率化など、具体的な成果を出すことで信頼を築きます。この段階では、部下のモチベーション管理や業務分担の最適化など、基本的なマネジメントスキルを習得します。
重要なのは、単に作業を管理するのではなく、チームメンバーが成長できるような環境づくりを心がけることです。後輩への指導を通じて、自分自身の説明力や人材育成力も向上させることができます。
Step2:経理部長・マネージャー段階
経理部門全体の責任を持ち、予算策定や管理会計、経営分析などより戦略的な業務に関与します。他部門との連携機会を積極的に作り、総務や人事、法務担当者との情報交換を深めます。経営陣への報告機会を増やし、財務面から会社の課題や改善点を提言する経験を積みます。
この段階では、経理の専門知識を活かしながらも、会社全体の課題解決に貢献する視点を養うことが重要です。例えば、人件費の分析から人事制度の改善提案をしたり、オフィス賃料の検討から総務部門と連携して最適なオフィス戦略を立てたりといった、部門横断的な取り組みが求められます。
Step3:管理部門統括段階
経理で培った数字への強さと、Step1・2で身につけたマネジメント経験を活かして、管理部門全体を統括します。
各部門の専門知識は部門長に任せつつ、全体最適の視点で部門間の調整や戦略立案を行います。
その他のキャリアパス選択肢
王道ルート以外にも複数の道筋が考えられます。総務や人事部門での実務経験を積んでから統括ポジションを目指すルートでは、各部門の実情をより深く理解できる利点があります。
全社的なプロジェクト(システム導入、業務改革など)のリーダー経験を通じて統括力を身につける方法では、部門横断的な視点と調整力を効率的に習得できます。より早期に管理部長ポジションに就きたい場合は、転職を活用して他社で経験を積むという戦略的な選択も有効です。
また、子会社や関連会社での管理部門責任者を経験してから本社の統括ポジションに戻るパターンでは、より裁量の大きな環境で経験を積むことができます。
管理部長になるための具体的な準備・行動計画
今すぐ始められること
他部署との連携強化
月1回以上、総務や人事担当者と業務上の情報交換の機会を設けましょう。経理業務で得た気づきを他部署に共有したり、逆に他部署の課題を聞いたりすることで、管理部門全体の課題を把握する習慣をつけます。
管理会計・予算管理への関与拡大
管理会計や予算策定業務への関与を上司に相談し、より戦略的な業務に挑戦してみましょう。
部門別の予算作成支援や、投資対効果の分析など、経営判断に直結する業務経験は管理部長への重要なステップとなります。
部下のマネジメント経験の積み重ね
後輩や部下がいる場合は、積極的に指導やフィードバックを行い、マネジメントスキルを磨きましょう。一対一の面談を定期的に実施したり、チーム全体の目標設定と進捗管理を任せてもらったりすることで、組織運営力を身につけます。
中期的に取り組むこと(6ヶ月〜2年)
総務・人事・法務の基礎知識習得
総務・人事・法務の基礎知識を書籍やセミナーで学習し、各分野の基本的な業務内容を理解しましょう。完全に専門レベルまで習得する必要はありませんが、各部門の担当者と対等に話せる程度の知識は必要です。
経営陣との接点作り
決算説明会や取締役会での報告機会があれば、積極的に手を挙げて経営陣との接点を作りましょう。
経営陣がどのような視点で会社を見ているのか、どんな情報を求めているのかを直接学ぶことができます。
社内プロジェクトへの積極参加
全社的なプロジェクト(働き方改革、コスト削減、システム導入など)があれば、経理の立場から積極的に参加しましょう。プロジェクトを通じて他部門のメンバーとの協働経験を積み、部門横断的な視点を養うことができます。
長期的なキャリア戦略(2年以上)
MBAや資格取得の検討
MBAや中小企業診断士などの資格取得により、経営全般の知識を体系的に習得することを検討しましょう。これらの学習プロセスで得られる経営的な視点は、管理部長として必要な戦略的思考力の向上に直結します。
転職も含めたキャリア選択肢
現職での昇進が困難な場合は、管理部長候補としての転職も視野に入れ、市場価値を高める経験を積みましょう。転職市場では、経理での実績に加えて、マネジメント経験や他部門との連携実績が重視される傾向にあります。
まとめ・行動喚起
経理職から管理部長へのキャリアアップは、計画的なステップアップにより十分実現可能な目標です。経理で培った数字への強さと正確性への意識は、管理部門統括において大きなアドバンテージとなります。
大切なのは明日からでも始められる小さな行動を積み重ね、着実にマネジメント経験と他部門への理解を深めていくことです。完璧を目指さず、できることから一つずつ取り組んでいけば、必ず管理部長に必要な能力は身についていきます。
まずは「他部署との連携強化」「管理会計への関与拡大」「部下指導の積極化」の3つから始めて、管理部長への道を歩み始めましょう。一歩一歩着実に進んでいけば、あなたの「もっと幅広く管理部を見たい」という想いは必ず実現できるはずです。
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